一家の大黒柱が亡くなった時、家族間でさまざまな相続の話が出ます。その中で忘れてはいけないのがお墓の相続です。
お墓は他の相続財産と扱いが異なる部分があるので、いざという時に悩んでしまいます。また、相続する人がいない場合でもお墓を放置しておくわけにはいきません。お墓を相続するときの流れやかかる費用について、事前に知っておきましょう。
お墓の名義人が亡くなったときにすること
まず、お墓を相続する人を決めます。お墓には墓石の所有権と墓地の永代使用権があり、その権利はお墓の名義人にあります。
お墓は祭祀財産であるため、一般の相続財産とは扱いが異なります。相続人ではなく、祭祀財産の所有権は祭祀継承者が引き継ぐと民法で決められているのです。
祭祀後継者とは、先祖代々の祭祀を主宰する人です。そのため、必ずしも長男である必要はなく、他家に嫁いだ娘や近くに住む友人等でもお墓の継承者になることができます。
お墓を継ぐことが決まったら、名義変更をします。必要な書類は、墓地使用権承継承認申請書、永代使用許可書、前名義人の除籍謄本、新名義人の住民票・印鑑証明書、相続人全員の同意書です。
また、お墓を継ぐ人が誰もおらず、相続人が決まらない場合があります。お墓は相続財産ではないため、相続人であってもお墓を相続する義務がないからです。
しかし、その場合でも、そのまま放置しておくわけにはいきません。その際には、墓地を更地に戻して管理者に返還する必要があります。
これらは、一般的に「墓じまい」と呼ばれています。トラブルを未然に防ぐために、墓地の管理者に事前に書面で申し込んでおくと安心です。
お墓の相続にはどのくらいお金がかかるのか
お墓は祭祀財産であるため、相続税はかかりません。また、土地も永代使用権が発生しているだけなので、固定資産税の支払いもありません。
ただし、ほとんどの場合、名義変更の手数料が発生します。金額は500円から1万円と幅広く、墓地の管理者によって異なります。
相続の手続き自体にかかる費用はこれだけですが、お墓を維持していくため毎年支払いが発生するものがあります。
お寺の敷地内にお墓がある場合、多くはそのお寺の檀家となっていることが多いです。そうするとお墓の管理費だけでなくお寺の維持費用などもあるので、合計で4~5万円ほど必要になります。
民間の墓地を利用している場合には、管理費として年2万円くらいが必要です。公営の墓地だとさらに安く1万円以内ですむことが多いです。
名義人が亡くなる前にできること
お墓の名義人自身が、後継者のために何かできることはないのでしょうか。
最近では子供が遠方に住んでいることも多く、お墓の相続トラブルは増えています。自分が亡くなった後に家族が困らないように、事前に準備しておく必要があります。
お盆や正月などの家族が集まるときに、きちんと話し合っておくことが大切です。お墓を継ぐ人、維持費の内訳、葬儀や法要の一連の流れなどを話しておきます。相続する方も事前に把握しておけば心の準備ができます。
また話し合いの結果、誰も継げないとなるかもしれません。その場合には、現在の名義人が「墓じまい」にむけて準備することも必要です。先祖の遺骨を永代供養墓に移したり、自分もそこに入れるように手続きをしておくことは生前でもできます。
遺される家族の負担を少しでも減らすことができるように、終活の一環として準備しておくとよいでしょう。
まとめ:事前にしっかり話し合っておくことが必要
死後のこと、特にお墓のことは家族であっても話しにくいものです。急に相続の話が出て困らないように家族で話し合い、今できることを少しずつ実行していきましょう。
事前に準備できることがあれば相続者の負担も減らせますし、流れがわかれば継ぐ方も安心できます。家族のあり方が変化してきている今、お墓のことについてもう一度しっかり考えてみるのもよいでしょう。