日本ではほかの家に嫁いだ女性はその家のお墓に入るというのが一般的な考えがありましたが、近年では少子化の影響を受けてこの形式が変化しています。
それが「両家墓」というもので、自分の家と配偶者の家のお墓、つまり二世帯を共に埋葬するという形です。
両家墓にすると費用を安くでき、管理も簡単になるというメリットがあります。今回は両家墓の種類、両家墓にする注意すべきことなども含めてお伝えしていきます。
目次
両家墓の種類
両家墓といっても、ひとつのお墓に一方を入れるというタイプだけでなく、いくつか種類があります。
ひとつのお墓を両家のお墓にする
最も多い形がひとつのお墓に一方のお墓を改葬してまとめることです。
一般的なお墓の場合、6~10柱ほど埋葬できますが、改葬するときに古い遺骨だけは合祀して合祀墓にしてもよいでしょう。遺骨が多ければ納骨室が二段になっているものもあります。
同じ墓地区画にふたつのお墓をそれぞれ建てる
墓地にスペースがあるならば、同区画内にお墓をふたつ建てることができます。
新しくお墓を建てる場合と、一方のすでにあるお墓を移動してくる場合がありますが、費用がある程度かかるでしょう。
メリットとしては、それぞれの墓標があるため家系ごとに遺骨を埋葬できる上にお墓の管理負担が減ることです。
自由度の高いひとつのお墓を建てる
家名を彫らずに「愛」「絆」「自由」などの好きな抽象的な言葉をひとつの洋墓に刻むため、納骨される人を選ばないのが特徴です。
両家の家名や家紋については棹石(さおいし)の下部や花立、外柵の門柱などに刻みます。
五輪塔を建てる
五輪塔は供養塔として用いられることが多くあまり普及していませんが、和型墓石のひとつでお墓のように建てることができます。
ひとつの墓域に夫婦墓や先祖代々の墓、複数の家の墓が建っている場合、それぞれのお墓を撤去してから、ひとつの納骨堂にそれぞれの遺骨を納めてお墓を管理できます。
役割においては一般的なお墓と本質的な違いはなく、建立の値段についても大きな違いはありません。
なぜ両家墓が選ばれるのか?
両家墓が選ばれるには以下のようなメリットがあります。
一度に両方のお墓参りや掃除を済ませることができる
お墓が両方、別々にあるとお参りにも時間や手間がかかりますし、それぞれのお墓の掃除や手入れをしなくてはいけないので大変です。
ですが、お墓が一つにまとめられていることで、墓守や家族の肉体的負担を大幅に減らすことができます。
お墓建立の経済的負担が軽くなる
両家のお墓をひとつにすることで、お墓の建立費用が半分ほどに抑えられます。
すでにお墓が用意されているならば墓石の「○○家之墓」や「〇〇家先祖代々之墓」と彫られている棹石をリフォームするだけで墓地代は不要になります。
両家墓にするときのトラブル防止策
両家墓にするとお墓の費用が安く済むという大きなメリットがありますが、起きやすいトラブルも事前に知っておきましょう。
夫婦の宗旨宗派が同じであること
一番多いのは、夫側のお墓が寺院の墓地にある場合です。例えば、妻側の宗旨宗派が曹洞宗で院にある場合、浄土真宗の家を両家墓にすることが難しいということです。このようなケースは寺院のほうから両家墓にするのを拒否されることがあります。
改宗という方法もありますが、家族や親族間でトラブルも生まれやすいため、まずは両家墓にする際は寺院のほうに事前確認するほうが無難でしょう。
親族が同意していること
お墓をどうするかは墓主に権限がありますが、先祖から承継されているお墓ですから家族だけで決めてしまわず、まずは親族に相談することが大切です。
本家や分家という意識はだいぶん薄くなっている時代ですが、勝手に両家墓にしてしまうと親族はあまりいい気持ちがしないかもしれませんし、トラブルに発展する可能性もあるからです。
民間の霊園や墓地は両家墓を受け入れてくれる
寺院墓地ほど厳しくありませんが、公営墓地の多くはまだ両家墓に対応していません。
ですが、民間墓地や民間霊園は宗旨宗派を問わないため、両家墓に対応しているところがほとんどですので、そちらを選ぶ人も多いようです。
墓石に家名を彫刻する問題をクリアする
両方の家名を墓石に彫刻することになりますが、墓地の規約によっては並べて彫刻することが出来ないこともあります。
また、洋型墓石に彫る場合は、両家の性のどちらを上にするかでもめることもあります。
その場合、抽象的な文字「愛」「絆」などにしたり、和型墓石であれば「先祖代々之墓」として側面に両家の戒名を彫ることで解決するようです。
まとめ
自分自身がひとり娘である、もしくは配偶者がひとり娘である場合、両家墓にすることによって実家の祭祀継承者がいないことを解決することができます。
また、両家墓にすることで経済的負担が減り、お墓の管理も楽になるという大きなメリットもあります。
ですが、宗旨宗派が違う場合や同意されていない場合はトラブルの元となりますので、家族や親族とよく話し合って慎重に決めるとよいでしょう。