近年では、故人のご遺骨をお墓に埋葬するのではなく、「散骨」という埋葬方法を選択する方も多くなってきているようです。
船などで海上まで移動し、散骨を行う「海洋散骨」が有名ですが、実際、散骨とはどのような様式の埋葬なのか、気になるところではないでしょうか。
今回は、散骨の意味やかかる費用、散骨までに必要な手続きやよくあるトラブルについて解説します。
散骨とは
散骨は葬送方法の一つです。日本では一般的に遺体を火葬した後、焼いた骨を骨壺に入れてお墓か納骨堂に納めますが、火葬した後の遺骨を粉末状にして海や山に撒くのが散骨です。
散骨の意味とよく混同されるものに樹木葬があります。焼いた骨を粉末状にした場合でも、粉末状にしない場合でもその上に樹木を植えれば埋葬です。
地中に焼いた骨を埋めることから墓地・埋葬等に関する法律が適用さるため、墓地として許可された場所にしか樹木葬としての埋葬はできません。
これに対して、散骨は焼いた骨を粉末状にしたものを撒くだけなので墓地・埋葬に関する法律の適用を受けません。しかし、刑法の遺骨遺棄罪に該当するか否かについては法学者の結論は出ていません。
ただし、ある団体が公然と散骨した際に法務省が葬送のために節度をもって行えば問題ないとの非公式見解を示したことがあります。国としては散骨を黙認しているというのが現状でしょう。
散骨の方法
散骨のためには焼いた骨を2mm以下のパウダー状にする必要があります。特に法律に定めがある訳ではありませんが前述の遺骨遺棄などのトラブル防止の観点からです。
費用をかけずに自分でパウダーにすることも可能ですが、一般に20時間位かかると言われています。専門業者に依頼すると時間は60分程度、費用は1万円前後です。
主な散骨の方法には海洋散骨、埋葬によらない樹木葬、宇宙葬があります。海洋散骨には専門業者への依頼が必要です。一家族だけで船をチャーターする個別散骨、複数の家族で同じ船をチャーターする合同散骨、家族が乗船しないで業者に代行してもらう委託散骨があります。
散骨にかかる費用
費用は個別散骨で30万円前後、合同散骨で10万円前後、委託散骨で5万円前後です。
埋葬することなく樹木の周りに散骨する方法については、住民感情などの関係から多くの地方自治体で制限されていて現在ではほとんど行われていません。
宇宙葬は専門の業者に依頼して遺灰の入ったカプセルを宇宙へ打ち上げるものです。しかし、積載重量の関係から一部の遺灰しか乗せられない欠点があります。費用は20万円台からのサービスもありますが、一般に高額です。
散骨に必要な手続き
散骨に関する法律はありません。故人が亡くなった際の死亡診断書や死亡証明書によって死亡届を提出する手続きは同じです。死亡届が受理されると火葬許可証が発行されて遺体を火葬します。
火葬が終って火葬許可証に火葬執行済の印が押されたものが埋葬許可証です。散骨を業者に依頼する場合、多くの業者が埋葬許可証をもって遺骨の身元を確認します。
墓じまいをして散骨する場合に遺骨の身元確認に使用されるのは改葬許可証です。改葬許可証は墓地のある地方自治体から交付を受けます。
散骨に際して一部の遺骨を残した場合に、それを埋葬する場合は埋葬許可証や改葬許可証が必要です。大切に保管しておいた方が良いでしょう。散骨すること自体にその他の特別の手続きはありません。
散骨でよくあるトラブルと注意点
散骨してしまうと墓参りして弔うことができません。遺骨の一部を残して弔いたいと考える親族がいるかもしれないので親族間のトラブルを避ける上では関係する親族の同意を得ておくことが大切です。
海洋散骨では散骨のための船が出航できないことでのトラブルがよく発生します。余裕をもった計画を立てるとともに、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
粉骨から散骨までのサービスを提供する業者についてのテレビ報道があったことから悪質な業者の出現が報告されています。中には実体のない業者もいますので、しっかりとした確認が必要です。
海外で散骨する場合には、遺骨の持ち出しや持ち込む国で必要な書類などがあります。事前の確認が重要です。国内での散骨についても制限のある自治体があります。事前にしっかりと情報収集しておきましょう。
まとめ
法律上の制約が少ないことから散骨は自由にできると考えがちです。散骨も他の葬送方法と同様に厳粛な葬儀に違いはありません。節度を持って行うことで認められていることです。
自身で執行するにしても業者に依頼するにしても火葬までの手続きに違いはありません。親族の同意を得るなどの十分な準備と周囲に配慮した上で実施する必要があります。